おれが母にしてあげられたことは、一体なんだったのだろうか。


母がずっと行きたがっていた中国にも、体がよくなったら一緒に行こうと話していた
北海道にも連れていってあげられなかった。
母が闘病している時たまたまやっていたあるテレビ番組で母が大喜びして見ていた、
兎がたくさんいるという、日本にある小さな島にさえ連れていってあげられなかった。

母はおれが結婚したらその相手と2人で
一緒にあちこち買い物したり、いろいろな所へ行くのが夢だった。
でもその夢はおろか、あんなに子供が好きだった母に
おれは孫を抱かせてあげることもできなかった。

おれが母にしてあげられたことは、
ときどきその固くなった足を揉んであげたことだけだった。

言葉に尽くせないくらいたくさんの愛をもらったのに、
まだ何も返せないうちに母と別れなければならなかった。

苦労した母に、苦しんだ母にもっといろいろなことをしてあげたかった。
もっとやさしい言葉をたくさんかけてあげればよかった。
もっと足を揉んであげればよかった。
痛いところをもっとさすってあげればよかった。
もっと楽をさせてあげたかった。

おれは何て愚かだったのだろう。
失って初めて大切なものに気づくなんて。

でも、今おれはこの母の子供で本当によかったと思った。

いつだっておれはこの母の子供であることに変わりはない。
今までも、そして、これからも。

母と一緒に過ごした時間は、すべて真実だった。

一緒に笑ったこと、一緒に泣いたこと、

楽しいことも、悲しいこともいっぱいあった。

これから先おれはどうなっても、
絶対に母を忘れない。

母からもらった愛を一生胸に刻めるように、
母からもらったこの命を大切に生きる。

思い出は心の中に永遠にきっと残る。

おれの中にも。

母の中にも。