親愛なるおふくろへ

あなたが突然亡くなってから、もう6年が経ちます。
あなたが亡くなってから、おれは長野を出ました。
今は東京で暮らしています。

おれはずっと過去から逃げてきました。
でも、最近やっと冷静に過去のことを振り返ることができるようになりました。

あなたはおれを産んでくれた時、その時の輸血がもとで癌になり、多くの痛みと苦しみを背負いました。
さらに長年に渡るおれと父との争いが、あなたの死期を早まらせてしまったのかもしれません。

おれと父が、やはりあなたを死へと追い詰めてしまったのでしょうか。
あるいは、やさしいあなたのことですから、自分の介護のことでこれ以上迷惑をかけたくないと思ったからでしょうか。
あるいは、おれたちの骨肉の争いに疲れてしまったのでしょうか。
それとも、これ以上つき合うのはかえって二人のためにならないと思ったからでしょうか。

そしてあなたは、やはり家族に迷惑がかかると、誰にも何も言わず死んでいきました。
文句一つ言わず家族のために尽くしたまま、亡くなっていきました。

おれはあなたにとって、あまりいい息子ではなかったかもしれません。
おれはずっと自分の心の中にあった葛藤のために、あなたを傷つけていたのかもしれません。
おれはあなたからもらった限りない愛のうち、どれくらいあなたに返してあげられたのでしょうか。

でもきっとあなたが今ここにいたら、どんなことを言うのか、おれにはわかります。
お前はいつも私にやさしかったと、あなたが心から言ってくれることを知っています。

結局、おれはあなたの命を救えませんでした。
そして、痛みと苦しみの中にいるあなたのことを、楽にしてあげることもできませんでした。

あなたが亡くなってから、おれはすべての希望を失ってしまいました。
自分が生きていく道を失ってしまいました。

でも、随分長い時間がかかりましたが、今やっとおれの中で過去が終わろうとしています。
過去がどんなに苦しくても、やりきれなくても、暗いトンネルから出る時が来たのだと思っています。

自分自身もう十分苦しんだと思っています。
だから、もうおれは自分を苦しめるのをやめようと思いました。
そうでなければ、あなたが亡くなっていった意味がなくなる気がするから。
これからは、もう精一杯自分のために生きていこうと思っています。

過去は終わりました。
あなたのあの時の痛みも、苦しみもすべて終わりました。
そしてあの時のあなたとおれとの悲しい運命も終わりました。

だから、おれは時々思い出すことがあっても、もうあの頃への執着を手放します。
そしておれは、今度は自分のために幸せな未来を描いていくつもりです。
きっとこうなることこそ、あなたのおれへの一番大切な願いだったような気がします。

いままでおれのことをずっとずっと愛してくれて、ありがとうございました。
おれのこと産んでくれて、ありがとうございました。
おれは、あなたのことをずっとずっと忘れません。

本当に、本当にありがとうございました。

最後に、

あなたは最高の母親でした。


あなたを愛する息子より