幼い頃、絶えず脅かされる環境の中で、おれは我慢することを覚え、自分を殺すことを選んだ。

もし仮に、その時自分が父に反抗していたなら、ますますその時の父を助長させてしまっただろう。
だから、それだけは、絶対に避けなければならなかった。

その頃の自分にとって、すべてにおいて我慢すること、自分を殺すことは、それ以上状況を悪化させないことであり、反対に、父に反抗することは、状況をますます悪化させることだった。
つまり、我慢すること、自分を殺すことが良いことであり、正しいことだったのだ。

それは、その頃の自分にとって確かにプラスだったのかもしれない。
当時の自分は、そうすることでしか自分を守ることができなかったのだから。

しかし、それは同時に、それ以後の人生の自分にとっては、反対に、自分自身にマイナスを招き続けてしまう間違った思い込みだったのだ。

そういう間違った思い込みのまま、大人になっただけのおれは、家庭以外の他人に対しても、我慢すること、自分を殺すことを自分自身に強要し続けた。

他の人ならば、大人になったら、普通に自分を主張し、他人に適切に対応できるだろう。

しかし、おれの場合は、この間違った認識が、自分の心の深いところで見えないブレーキとなっていて、他の人のようにはできなかった。
自分の中の常識は、他の人とは昔から違っていたのだ。

そういった、自分の中で常識になっていたもの、間違った思い込み、心理学の言葉でいえば認知の歪みというものを、それ以後の自分は、一度リセットする必要があった。

カウンセリング、セラピーは、このような、その人自身の持つ間違った思い込み、認知の歪みを修正する方法なのだ。